諸子百家争鳴 - 中国古典思想の世界 - 論語/孔子/孟子/大学/中庸/荀子/老子/荘子/列子/韓非子/孫子/墨子/史記
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 ■孟子(もうし) 14巻7篇 34,685字
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 孟子(もうし) - 生没年:前372? - 前289 姓:孟 名:軻 字:一説に子輿(子車・子居とも) 出身地:鄒国(騶)
 儒教では孔子に次ぐ人物であり、「亜聖」と称される。孔子の孫である子思(孔伋)の門人に学んだという。
 性善説を唱え、四端(惻隠・羞悪・辞譲・是非)の絶間ない育成により聖人にも近づくことができると説く。
 魏・斉・滕・宋・魯など諸国を遊説するも、時代にそぐわない迂遠な政治論であったため用いられなかった。
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 『孟子(上・下)』 孟軻/小林勝人/岩波文庫 …> [関連書籍] 
 戦国時代の中国、百家争鳴の世に現われて、孔子の教えを軸にしつつ、独自の思想を展開した
 孟軻の言行録である。彼は、人が天から与えられた本性は善であるという信念に立って、
 この天から万人に等しく与えられた本性を、全面的に開花させるための実践倫理を示した。
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■孟子(もうし) - 生没年:前372? - 前289 姓:孟 名:軻 字:一説に子輿(子車・子居とも) 出身地:鄒国(騶、元の邾国) …
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儒教では孔子に次ぐ人物であり、「亜聖」と称される。孔子の孫である子思(孔伋)の門人に学んだという。
性善説を唱え、四端(惻隠・羞悪・辞譲・是非)の絶間ない育成により聖人にも近づくことができると説く。
魏・斉・滕・宋・魯など諸国を遊説するも、時代にそぐわない迂遠な政治論であったため用いられなかった。
やがて仕官の道を諦めると郷里に戻り、そこで弟子の育成に努め、併せて著作活動に入ったという。

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■『孟子』について …
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『孟子』(7篇)は四書の一で、孟軻自身とその門弟によって著されたと伝えられる。戦国時代に成立した。
思想の主題は「性善説」に基づき、仁・義・礼・智の「四端」を養いながら仁義の道を歩むことの重要性を説く。
その筆勢は雄渾であり、人を動かす名言も多いが、「易姓革命説」に代表されるように論鋒ははげしい。
唐の韓愈の称揚を経て北宋代に儒教の経典となり、南宋の朱熹により四書の一として位置付けられた。
現行本は後漢の趙岐による『孟子章句』(14巻7篇)を底本としている。「章句の学」についてはこちらを参照。

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■本頁について
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『孟子』 7篇(岩波文庫版は261章)のすべてについて、各章の概要・重要文句を抄出した。
各篇の章立て・書き下し・注釈は、『孟子(上・下)』(孟軻/小林勝人/岩波文庫)による。
また、各章の見出し・タイトルは、『中国古典文学大系 3 論語・孟子・荀子・礼記』(藤堂明保・福島中郎/平凡社)による。
岩波文庫は白文、書き下し、全訳。平凡社は論語・孟子・荀子を全訳、礼記は抄訳(すべて白文、書き下し文なし)。
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※本頁は上記本の補助的な目次・ガイドを目指し作成しています。現代語訳や注釈等は訳本をご確認ください。

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■孟子(もうし) 14巻7篇261章 34,685字
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01 梁恵王上(りょうけいおう) 第一 凡7章
├01 仁義こそ第一
├― 孟子、梁恵王(魏恵王)に見(まみ)ゆ - 上下交(こもごも)利を征(と・取)らば、而(すなわ)ち国危うし。
├― 未だ仁にして其の親を遺(す)つる者はあらざるなり。未だ義にして其の君を後(あなど)る者はあらざるなり。
├― 王、亦(ただ)仁義を曰わんのみ。何ぞ必ずしも利を曰わん。
├02 賢者であってこそ楽しめる
├― 賢者にして後 此れを楽しむ。不賢者は此れ有りと雖も楽しまざるなり。
├03 五十歩百歩
├― 甲(よろい)を棄て兵(ぶき)を曳(す)てて走(に)げ、或る〔者〕は百歩にして後止まり、或る〔者〕は五十歩にして後止まる。
├― 五十歩以て百歩を笑わば、則ち何如。 →五十歩百歩
├― 生を養い死を喪(おく)りて憾(うらみ)なからしむるは、王道の始なり。 →養生喪死
├04 獣を嗾(けし)かけて人を食わせる
├― 〔人を殺すに〕刃を以てすると政〔を以てする〕と、以て異なる有るか。
├05 仁者に敵なし
├― 彼(かれら)其の民を陷溺(かんでき)せしめんとき、王往きて之を征たば、夫れ誰か王と敵せん、故に仁者に敵なしといえり。
├06 天下を統一できる者は誰か
├― 孟子、梁襄王に見(まみ)ゆ - 人を殺すを嗜(たしな)まざる者、能く之を一にせん。
├07 恒産なければ恒心なし
├― 斉宣王、孟子に問う - 仲尼の徒、桓(斉桓公)・文(晋文公)の事を道(い)う者無し。是の以(ゆえ)に後世伝うる無く、臣未だ之を聞かざるなり。
├― 君子の禽獣に於けるや、其の生けるを見ては、其の死を見るに忍びず、(中略)是の以(ゆえ)に君子は庖廚(ほうちゅう・庖厨)を遠ざくるなり。
├― 明は以て秋毫(しゅうごう)の末(さき)を察(み)るに足るも、輿薪(よしん)を見ず。 →秋毫之末
├― 大山(泰山)を挾(わきばさ)みて以て北海(渤海)を超(こ)える。
├― 吾が老を老として、以て人の老に及ぼし、吾が幼を幼として、以て人の幼に及ぼさば、天下は掌(たなごころ)に運(めぐ)らすべし。
├― 中国に莅(のぞ)みて、四夷を撫(やす・安)んぜんと欲するは、(中略)猶お木に縁(よ)りて魚を求むるがごとし。
├― 恒産無くして恒心有る者は、惟(ただ)士のみ能くすと為す。民の若(ごと)きは、則ち恒産無ければ、因りて恒心無し。
├― 苟しくも恒心無ければ、放辟邪侈、為さざる無し。罪に陷るに及びて、然る後従いて之を刑するは、是れ民を罔(な)みするなり。 →放辟邪侈
└― 明君の民の産を制するや、必ず仰いでは以て父母に事(つこ)うるに足り、俯(ふ)しては以て妻子を畜うに足る。 →仰事俯畜

02 梁恵王下(りょうけいおう) 第二 凡16章
├01 民と共に楽しむ
├― 今、王 百姓と楽しみを同じくせば、則ち王たらん。
├02 文王の御猟場
├― 文王の囿(その)は方七十里なりしも、芻蕘(くさかる)者も往き、雉兔(かりする)者も往きて、民と之を同(とも)にせり。
├03 小勇と大勇 →匹夫之勇
├― 剣を撫(握)り、視(め)を疾(いから)して彼悪(いず)くんぞ敢て我に当たらんやと曰うは、此れ匹夫の勇にして、一人に敵する者なり。
├04 流連荒亡の悩み
├― 民の楽しみを楽しむ者は、民も亦其の楽しみを楽しむ。民の憂いを憂うる者は、民も亦其の憂いを憂う。
├― 先王には流連の楽しみと荒亡の行ないとなかりき。惟(ただ)君の行なうところのままなり。 →流連荒亡
├05 貨を好み色を好む
├― 鰥:老いて妻なし 寡:老いて夫なし 独:老いて子なし 孤:幼にして父なし 此の四者は天下の窮民にして告ぐるなき者なり。 →鰥寡孤独
├― 王、如(も)し貨を好み〔色を好むも〕、百姓と之を同(とも)にせば、王たるに於いて何の〔不可かこれ〕有らん。
├― 内に怨女(えんじょ)無く、外に曠夫(こうふ)無し。 →怨女曠夫
├06 顧みて他(よそごと)を言う
├― 王もまた棄て已(や)めん? - 四境の内治まらざれば、則ち之れを如何。王(斉宣王)、左右を顧みて他(よそごと)を言えり。
├07 任免処刑は民意にもとづいて
├― 国人皆な賢(さか)しと曰い、然る後に之を察(みきわ)め、賢しきを見て、然る後に之を用いよ。
├08 ひとりのおとこ紂を殺す
├― 仁を賊(そこな)う者之を賊と謂い、義を賊う者之を残と謂う、残賊の人は、之を一夫(いっぷ)と謂う。
├― 一夫 紂(ちゅう・殷紂王)を誅せるを聞くも、未だ〔其の〕君を弑(しい)せるを聞かざるなり。易姓革命説
├→ 易姓革命 - 天地革(あらた)まって四時成り、湯・武 命(めい)を革めて、天に順い人に応ず。革(かく)の時大いなるかな。(『易経』革卦)
├09 家は大工に、玉は玉造りに
├― 巨室を為(つく)らんとせば、則ち必ず工師をして大木を求めしむべし。 (中略)何を以てか玉人に玉を彫琢することを教うるに異ならんや。
├10 人民が喜ぶならば取れ →箪食壺漿
├― 万乗の国を伐てるに、〔民、〕箪食壺漿(たんしこしょう)して、以て王師を迎えたるは、豈(あ)に他有らんや、水火〔の苦しみ〕を避けんとてなり。
├11 王者の討伐
├― 東面して征すれば西夷(せいい)怨み、南面して征すれば北狄(ほくてき)怨み、奚為(なんす)れぞ我を後にすると曰いて、
├― 民の之を望むこと、大旱(たいかん)に雲霓(うんげい)を望むが若(ごと)くなり。 →滕文公章句下
├12 己から出たものは己にもどる
├― 曾子曰く、戒(いまし)めよ戒めよ、爾(なんじ)に出ずる者は、爾に反る者なり。
├13 民とともに守れ
├― 滕文公、憂国す - 民と与(とも)に之を守り、死を效(致)すとも民去らずんば則ち是れ可為(よか)らん。
├14 善政につとめるのみ
├― 苟しくも善を為さば、後世子孫必ず王者あらん。君子は業を創(はじ)め統を垂れ、継ぐべきことを為さんのみ。夫の成功の若きは則ち天なり。
├15 小国の守り
├― 君子は其の人を養う所以の者を以て人を害わず。 (中略)世の守りなり。身の能くする所に非ざるなり。死を效(致)すとも去る勿(なか)れ。
├16 魯君に会えぬのは天の意志
└― 行く止まるは人の能くする所に非ず。吾の魯候(平公)に遇わざるは天なり。臧氏が子、焉(いずく)んぞ能く予(われ)をして遇わざらしめんや。

03 公孫丑上(こうそんちゅう) 第三 凡9章
├01 管仲・晏子(晏嬰)の道、取るに値せず
├― 公孫丑問う - 夫子、斉にて当路(まつりごとをと)らば、管仲・晏子の功、復(また)許(き)すべきか。
├― (中略)孟子曰く、斉を以て王たらんは、由(なお)手を反すがごとし。
├― 孔子曰く、徳の流行は、置郵して命(めい)を伝うるよりも速かなり。
├02 浩然の気
├― 不動心 - 孟子曰く、我四十にして心を動かさず。 →不動心
├― 自ら反(かえり・省)みて縮(なお・直)からずんば、褐寛博と雖も、吾惴(ゆ・往)かざらん。自ら反みて縮ければ、千万人と雖も吾往かん。
├― 浩然の気 - 其の気たるや、至大至剛にして直く、養いて害うことなければ、則ち天地の間に塞(み・満)つ。 →浩然之気 →至大至剛
├― 其の気たるや、義と道とに配す、是れなければ餒(う・飢)うるなり。是れ義に集(会)いて生ずる所の者にして、襲いて取れるに非ざるなり。
├― 助長 - 宋人に其の苗の長ぜざるを閔(うれ)えて之を揠(ぬ)ける者有り。 (中略)予(われ)、苗を助けて長ぜしめたり。 →助長
├― 孔子曰く、聖は則ち吾能わず、我は学びて厭わず、教えて倦(う)まざるなり。
├― 宰我・子貢・有若、孔子を讃える - 生民有りてより以来(このかた)、未だ孔子より盛なるは有らざるなり。
├― 麒麟の走獣に於ける、鳳凰の飛鳥に於ける、大山の丘垤に於ける、河海の行潦に於ける、〔みな〕類なり。聖人の民に於けるも、亦類なり。
├03 覇者と王者
├― 力を以て仁を仮る者は覇たり。 (中略)徳を以て仁を行なう者は王たり。
├04 湿気を嫌って低地にいる
├― 仁なれば則ち栄え、不仁なれば則ち辱しめらる。今辱しめらるを悪みて不仁に居るは、是れ猶お湿(しめり)を悪みて下(ひく)きに居るがごとし。
├05 民より父母と慕われよ
├― 天下に敵無き者は、天吏なり。
├06 四つの芽生え
├― 四端 - 惻隠の心は、の端(はじめ)なり。 羞悪の心は、の端なり。 辞譲の心は、の端なり。 是非の心は、の端なり。 →四端
├07 仁は人の安らいの家
├― 仁は天の尊爵なり。人の安宅なり。
├08 人と共に善を行う
├― 諸(これ)を人に取りて以て善を為すは、是れ人と与(とも)に善を為す者なり。
├09 伯夷と柳下恵
└― 伯夷は隘(こころせま)く、柳下恵(展禽)は不恭(つつしまざる)なり。隘と不恭とは、君子由(よ)らざるなり。

04 公孫丑下(こうそんちゅう) 第四 凡14章
├01 天の時、地の利、人の和
├― 天の時は地の利に如かず、地の利は人の和に如かず。 (中略)君子は戦わざるを有(たっと・貴)ぶも、戦えば必ず勝つ。
├02 王の師となる臣
├― 今、天下 地(とち)は醜(たぐい)し徳は斉(ひと)しくして、能く相い尚(まさ)るなきは他なし、
├― 其の教うる所を臣とするを好みて、其の教を受くる所を臣とするを好まざればなり。
├03 受ける場合と受けない場合
├― 処することなくして之に餽(おく)るは、是れ之に貨(まいない・賂)するなり。焉(いずく)んぞ君子にして貨を以て取らるるあらんや。
├04 治者の責任
├― 今、人の牛羊を受けて、之を牧(か)う者あらば、則ち必ず之が為に牧(まきば)と芻(まぐさ)を求めん。
├05 余裕綽々
├― 官守ある者は、其の職を得ざれば則ち去り、言責ある者は、其の言を得ざれば則ち去る。
├― 我には官守もなく、我には言責もなければ、則ち吾が進退は豈(あに)綽綽然として余裕有らざらんや。 →余裕綽綽
├06 王驩(おうかん)とは、言わずもがな
├― 夫(かれ)既に之を治むる或(有)り、予(われ)何をか言わん。
├07 立派な棺
├― 君子は天下の以(ため・為)に其の親に倹(つづまやか)にせず。
├08 燕を伐つ者
├― 今、燕を以て燕を伐つ、何為(なんす)れぞ之を勧めんや。
├09 為政者の過失
├― 古の君子は、過(あやま)てば則ち之を改む。今の君子は、過つも則ち之に順う。
├― 古の君子は、その過(あやま)つや日月の食するが如く、民 皆之を見、其の更(あらた)むるに及びては、民 皆之を仰げり。
├10 富貴は願わず
├― 孟子、斉の臣たるを辞して帰る - 如(も)し予(われ)をして富を欲せしめば、十万を辞して万を受く、是れ富を欲すと為さんや。
├11 縁を断つ者
├― 孟子、斉を去り、昼(ちゅう・地名)に宿す - 子、長者を絶つか、長者、子を絶つか。
├12 孟子、斉を去る
├― 予(われ)三宿して後に昼(ちゅう・地名)を出ずるも、予が心に於ては猶お以て速かなりと為す。
├13 われをおきて誰そや
├― 天は未だ天下を平治することを欲せざるなり。
├― 如(も)し天下を平治せんことを欲せば、今の世に当りて、我を舎(お)きて其(そ)れ誰ぞや。吾 何為(なんす)れぞ不予ならんや。
├14 仕えて禄を受けず
└― 吾、王に見ゆることを得、退きて去るの志あり、変(いつわ・詐)るを欲せず、故に受けざりしなり。 (中略)斉に久しきは、我が志に非ざるなり。

05 滕文公上(とうぶんこう) 第五 凡5章
├01 舜 何人(なんびと)ぞ、我何人ぞ
├― 滕文公と孟子 - 孟子、性善を道(い)、言えば必ず堯・舜を称す。性善説
├― 顔淵(顔回)曰く、舜 何人(なんびと)ぞや、予(われ)何人ぞや。為すこと有らんとする者は亦是(かく)の若(ごと)くなるべし。
├02 喪に服する心
├― 曾子曰く、生けるときは事(つこ)うるに礼を以てし、死せるときは葬るに礼を以てし、祭るにも礼を以てする、孝と謂うべし。 →『論語』為政
├― 君子の徳は風なり、小人の徳は草なり。草は之に風を尚(くわ・加)うれば、必ず偃(ふ・伏)す。『論語』顔淵
├03 井田法(せいでんほう)
├― 昼は爾茅を于(取)り、宵(よる)は爾綯(縄)を索(な)え。亟(すみや)かに其れ屋を乗(覆)い、其れ始めて百穀を播(ま)け (『詩経』豳風・七月)
├― 民の道たる、恒産ある者は恒心あり、恒産なき者は恒心なし。苟(いや)しくも恒心なければ、放辟邪侈、為さざるなきのみ。 →放辟邪侈
├― 陽虎曰く - 富を為さんとすれば仁ならず、仁を為さんとすれば富まず。
├― 仁政は必ず経界より始まる。経界正しからざれば、井地釣しからず、穀禄平らかならず、是の故に暴君汙吏(おり)は必ず其の経界を漫る。
├04 心の労働と身体の労働
├― 神農の言(道)を為(治)むる者に許行というひとあり。 (中略)其の徒数十人、皆褐(かつ)を衣、屨を捆(つく)り席を織りて以て食と為せり。
├― 陳相、孟子に見ゆ - 百工の事は、固より耕し且つ為すべからざるなり。然らば則ち天下を治むることのみ、独り耕し且つ為すべけんや。
├― 人に治めらるる者は人を食(やしな)い、人を治むる者は人に食わるるは、天下の通義なり。
├― 人の道有(た・為)るや、飽食煖衣、逸居して教うることなくば、則ち禽獣に近し。暖衣飽食
├― 教うるに人倫を以てし、父子 親(しん)有り、君臣 義有り、夫婦 別有り、長幼 叙(序・じょ)有り、朋友 信有らしむ。五倫
├― 吾、夏を用(も)って夷(えびす)を変(化)するを聞けるも、未だ夷に変せらるる者を聞かざるなり。
├― 子夏・子張・子游、有若の聖人に似たるを以て、孔子に事うる所を以て之に事えんと欲し、曾子に強う。 →南蛮鴃舌
├― 曾子の孔子評 - 江漢以て之を濯(あら)い、秋陽以て之を暴(さら)すも、皜皜乎(こうこうこ)として尚(くわ)うべからざるなり。
├― 吾、幽谷を出でて喬木に遷る者を聞けるも、未だ喬木を下りて幽谷に入る者を聞かざるなり。
├― 物の斉(ひと)しからざるは、物の情(せい・性)なり。或いは相 倍蓰(ばいし)し、或いは相 什百(じゅうひゃく)し、或いは相 千万す。
├05 薄葬と厚葬
└― 墨の喪を治むるや、薄きを以て其の道と為す。 (中略)然れども夷子は其の親を葬ること厚かりしは、則ち是れ賤しむ所を以て親に事うるなり。

06 滕文公下(とうぶんこう) 第六 凡10章
├01 正当な招き方でなければ行かぬ
├― 陳代曰く、諸侯を見ざるは、宜(ほとん)ど〔狭〕小なるがごとし。今一たび之を見ば、大は則ち以て王たらしめ、小は則ち以て覇たらしむべし。
├― 尺(せき)を枉(ま)げて尋を直くす。枉尺直尋
├― 志士は溝壑(こうがく)に在るを忘れず、勇士は其の元(こうべ・首)を喪(うしな)うを忘れず。
├― 己を枉ぐる者にして、未だ能く人を直くする者はあらざるなり。
├02 まことの大丈夫
├― 天下の広居に居り、天下の正位に立ち、天下の大道を行なう。
├03 君子はみな仕官すべきものか
├― 孔子は三月君なければ、則ち皇皇如たり、疆(さかい)を出ずれば必ず質を載(の)す。
├― 士の位を失うは、猶諸侯の国家(くに)を失うがごとし。
├04 結果に報ゆ
├― 〔孟子は〕後車数十乗、従者数百人、以て諸侯に伝食す。以(はなは)だ泰(おご・奢)らずや。
├― 其の道に非ざれば、則ち一箪の食も人より受くべからず。如し其の道ならば、則ち舜、堯の天下を受くるも以て泰(おご)ると為さず。
├05 仁政を行えば斉・楚 恐るるに足らず
├― 東面して征すれば西夷怨み、南面して征すれば北夷(北狄)怨み、奚為(なんす)れぞ我を後にすると曰いて、
├― 民の之を望むこと、大旱(たいかん)に雨を望むが若(ごと)くなりき。 →梁恵王下
├06 薛居州 一人だけではできぬ
├― 一〔人〕の斉人之に傳(ふ)たるも、衆くの楚人之に咻(かまびす)しくすれば、日に撻(むちうち)ちて斉〔語〕せんことを求むと雖も得べからず。
├07 臣下でなければ会わぬもの
├― 曾子曰く、肩を脅(すく)めて諂(へつら)い笑うは、夏畦(かけい)よりも病(つか)る。
├― 子路曰く、未だ同(合)わずして言(ものい)い、其の色(かおいろ)を観るに赧赧然たるは、〔仲〕由の知る所に非ざるなり。
├08 正しくないとわかったら、ただちにやめよ
├― 如(も)し其の義(みち)に非ざるを知らば、斯(すなわ)ち速やかに已(や)めんのみ。何ぞ来年を待たん。
├09 好んで議論をするのではない
├― 予(われ)豈(あ)に弁を好まんや、予 已(や)むを得ざればなり。
├― 孔子曰く、我を知る者は其れ惟(ただ)春秋か。我を罪する者も其れ惟春秋か
├― 楊朱・墨翟の言、天下に盈つ。天下の言、楊に帰さざれば則ち墨に帰す。
├― 楊氏は我が為にす、是れ君を無みするなり。墨氏は兼愛す、是れ父を無みするなり。父を無みし君を無みするは、是れ禽獣なり。
├― 能く言を以て楊・墨を距(ふせ)ぐ者は、聖人の徒なり。
├10 蚯蚓(みみず)の節操
└― 〔陳〕仲子 悪(いずく)んぞ能く廉ならん。仲子の操を充たさんとせば、則ち〔蚯〕蚓(みみず)にして後可なる者なり。

07 離婁上(りろう) 第七 凡28章
├01 曲尺(かねじゃく)とコンパス →規矩準縄
├― 離婁(りろう)の明、公輸子の巧も、規矩(きく)を以(もち・用)いざれば、方員(ほういん)を成すこと能わず。 →離婁之明 師曠之聡
├― 徒善は以て政を為すに足らず。徒法は以て自ら行なわるる能わず。
├― 上に道揆(どうき)なく、下に法守なし。 →道揆法守
├02 殷鑒(いんかん)遠からず
├― 規矩(きく)は方員の至(いたり)なり、聖人は人倫の至なり。
├03 酔うのは嫌だが酒は飲む
├― 今、死亡を悪(にく)みて不仁を楽しむは、是れ由(なお)酔うことを悪みて而(し)かも酒を強(し)うるがごときなり。
├04 省みてわが身を正す
├― 行ない得ざる者あれば、皆諸(こ)れを己に反(かえ)りみ求めよ。其の身正しければ而(すなわ)ち天下之に帰せん。
├05 天下のもとはわが身にある
├― 天下の本は国に在り、国の本は家に在り、家の本は身に在り。
├06 政治はむずかしいものではない
├― 罪を巨室に得ることなかれ、巨室の慕う所は、一国之を慕い、一国之を慕う所は、天下之を慕う。
├07 天の道理に逆らう者は亡ぶ
├― 天に順う者は存し、天に逆う者は亡ぶ。
├― 孔子曰く、仁には衆(おお)きを為(もち・用)うる可(所)なし。国君仁を好めば、天下敵無し。
├08 清むときは冠の紐を洗い、濁るときには足を洗う
├― 孺子あり歌いて曰く、滄浪の水清(す)まば、以て我が纓(ひも)を濯(あら)うべく、滄浪の水濁らば、以て我が足を濯うべし。
├09 七年の病に三年の艾(もぐさ)を使う
├― 民の仁に帰するは、猶(なお)水の下(ひく)きに就き、獣の壙(こう・広野)に走るがごときなり。
├― 今の王たらんと欲する者は、猶(なお)七年の病に三年の艾(もぐさ)を求むるがごときなり。
├10 自暴自棄
├― 自ら暴(そこな)う者は、与(とも)に言うあるべからざるなり。自ら棄(す)つる者は、与に為すあるべからざるなり。自暴自棄
├― 仁は人の安宅なり。義は人の正路なり。安宅正路
├11 道は近くに在る
├― 道は邇(ちか・近)きに在り、而るに〔人〕諸(これ)を遠きに求む。事は易きに在り、而るに之を難きに求む。 →在邇求遠
├― 人人(ひとびと)其の親(しん)を親とし、其の長を長とせば、而(すなわ)ち天下平らかなり。
├12 誠は天の道
├― 誠は天の道なり。誠を思うは人の道なり。至誠にして動かざる者は未だ之れあらざるなり。誠ならずして未だ能く動かす者はあらざるなり。
├13 人民の父とも言うべき人が身を寄せる
├― 伯夷と大公望 - 吾聞く西伯(文王)は善く老を養う者なりと。 天下の父之に帰するなり。天下の父之に帰せば、其の子焉(いずく)にか往かん。
├14 孔子に見捨てられる者
├― 冉求、季氏の宰となる - 孔子曰く、求は我が徒に非ず。 (中略)君仁政を行なわざるに之を富ますは、皆孔子に棄てらるる者なり。
├15 目は心の窓
├― 人を在(み・察)るには眸子(ひとみ)より良きは莫し。眸子は其の悪を奄(おお)う能わず。
├― 胸中正しければ、則ち眸子瞭(あき)らかなり。胸中正しからざれば、則ち眸子眊(くら)し。
├16 つつしみ深くつづまやかな者
├― 恭者は人を侮(あなど)らず、儉者(けんしゃ)は人より奪わず。
├17 天下の溺れるのは道によって救う
├― 淳于髠と孟子 - 天下溺るれば、之を援(すく)うに道を以てし、嫂(あによめ)溺るれば、之を援うに手を以てす。
├18 子をかえて教う
├― 古者(いにしえ)は子を易えて之を教う。父子の閒は善を責めず。善を責むれば則ち離る。離るれば則ち不祥焉(これ)より大なるは莫し。
├19 仕えることの根本、身を守ることの根本
├― 孰(いず)れか事(つか)うるとなさざらん、親に事うるは事うるの本なり。孰れか守るとなさざらん、身を守るは守るの本なり。
├― 曾子、曾晢を養えるとき、必ず酒肉ありき。将に徹(とりさ・撤)らんとして、必ず与うる所を請(と・問)う。余りありやと聞けば、必ず有りと曰う。
├20 君主の心を正す
├― 君仁なれば不仁ならざる莫く、君義なえば不義ならざる莫く、君正しければ正しからざるは莫し。一たび君を正して国定まる。
├21 名誉と非難
├― 虞(はか)らざるの誉あり、全きを求むるの毀(そしり)あり。
├22 軽々しく言葉を出す
├― 人の其の言を易(かろ)んずるは、責(せめ)無きのみ。
├23 人の師となりたがる
├― 人の患(うれい)は、好んで人の師となるに在り。
├24 目上の人に対する礼儀
├― 楽正子に諭す - 舎館定まりて然る後に長者に見ゆるを求む。
├25 飲食のためにのみ行動するな
├― 楽正子に諭す - 子の子敖に従いて来れるは、徒に餔啜(ほせつ)するのみ。我意(おも)わざりき、子 古の道を学びて以て餔啜せんとは。
├26 無断で娶(めと)る
├― 不孝に三あり。後(のち)無きを大なりと為す。舜の告げずして娶(めと)るは、後無きが為なり。君子は以て猶(なお)告ぐるがごとしとなせり。
├27 手の舞足の踏むところを知らず
├― 仁の実(じつ)は、親に事(つか)うる是れなり。義の実は、兄に従う是なり。
├― 智の実は、斯の二者を知りて去らざる是れなり。礼の実は、斯の二者を節文する是れなり。楽の実は、斯の二者を楽しむ。
├28 大孝
└― 親に得られざれば、以て人と為すべからず。親に順(よろこ・悦)ばれざれば、以て子と為すべからず。

08 離婁下(りろう) 第八 凡34章
├01 先聖後聖その揆(き)は一つ
├― 舜は東夷の人なり、文王は西夷の人なり - 地の相い去る、千有余里、世の相後(おく)る、千有余歳〔なれども〕、
├― 志を得て中国に行えるは、符節を合するが若(ごと)く、先聖後聖、其の揆(き)は一なり。
├02 政治を知らぬ者
├― 子産は恵なれども政を為すを知らず - 政を為す者は、人ごとに之を悦(よろこ)ばしめんとせば、日も亦足らず。
├03 仇のために着る喪服はない
├― 君の臣を視ること手足の如くなれば、則ち臣の君を視ること腹心の如し。
├04 大臣・役人の去就
├― 罪なくして士を殺さば、則ち大夫は以て去るべく、罪なくして民を戮(ころ)さば、則ち士は以て徙(うつ)るべし。
├05 君主は民のかがみ
├― 君仁なれば〔民〕仁ならざること莫く、君義なれば義ならざること莫し。
├06 似て非なる礼、似て非なる義
├― 非礼の礼、非義の義は、大人は為さず。
├07 すぐれた指導者を持つことを喜ぶ
├― 中は不中を養(おし・教)え、才は不才を養う。故に人は賢父兄あるを楽(ねが)う。
├08 守るべき一線をもつ者
├― 人は為さざることありて、而る後に為すことあるべし。
├09 人の善くない点を言いふらす
├― 人の不善を言わば、当(まさ)に後の患(うれ)いを如何すべき。
├10 極端なことをしない人
├― 仲尼(孔子)は已甚(はなは)だしきことを為さざる者(ひと)なり。
├11 ただ義に従うのみ
├― 大人は言必ずしも信ならず、行(おこない)必ずしも果さず、惟(ただ)義の在る所のままにす。
├12 赤子のこころを失わず
├― 大人とは、其の赤子の心を失わざる者(ひと)なり。
├13 葬儀こそ重大
├― 生を養うは、以て大事と当(な・為)すに足らず、惟(ただ)死を送る、以て大事と当すべし。養生喪死
├14 自得
├― 君子深く之に造(いた・詣)るに道を以てするは、其の之を自得せんことを欲すればなり。
├15 博く学び、ことこまかに説く
├― 博(ひろ)く学びて詳(つまび)らかに之を説くは、将(まさ)に以て反って約を説かんとすればなり。
├16 みずから善を行って人を感化教導す
├― 善を以て人を養(おし・教)えて、然る後に能く天下を服せしむ。天下心服せずして王たる者は、未だ之あらざるなり。
├17 真によくない言葉
├― 〔人、不詳を〕言うも、実(じつ)の不祥なし。不祥の実は、賢を蔽う者之に当る。
├18 水なるかな水なるかな
├― 原(源)ある泉(みず)は混混として、昼夜を舎(お)かず。科(あな)を盈(みた)して後に進み、四海に放(至)る。本ある者は是の如し。
├19 人間と動物の違い
├― 人の禽獣と異なる所以の者幾(ほとん)ど希(すくな)し。庶民は之を去り、君子は之を存す。
├20(19章の後半にも分けられる。その場合には260章となる)
├― 舜は庶物を明らかにし、人倫を察(つまび)らかにし、仁義に由(よ)りて行なう。仁義を行なうに非ざるなり。
├21 禹(う)湯(とう)文(文王)武(武王)と周公
├― 禹 - 旨酒を悪(にく)みて、善言を好(たの)しむ。
├― 湯 - 中を執りて、賢を立つるに方(つね・常)なし。
├― 文王 - 民を視ること傷(いた)むが如く、道を望むこと未だ之を見ざるが而(ごと)し。
├― 武王 - 邇(ちか)きを泄(あなど)らず、遠きを忘れず。
├― 周公 - 三王を兼ねて、以て四事を施(おこ)なわんと思う。
├22 孔子『春秋』を作る
├― 詩亡びて然る後に春秋作(おこ)る。晋の乗、楚の檮杌(とうこつ)、魯の春秋は一なり。其の事は則ち斉桓・晋文、其の文は則ち史。
├― 孔子曰く、其の義は則ち丘(孔子の名) 竊(ひそ)かに之を取れり。
├23 孔子に私淑す
├― 予(われ)未だ孔子の〔門〕徒たるを得ざりしも、予 私(ひそ)かに諸(これ)を人に〔聞きて〕淑(よ・善)くするなり。私淑
├24 清廉・恩恵・勇気
├― 以て取るべく、以て取るなかるべくして、取れば廉を傷(そこな)う。
├― 以て与うべく、以て与うるなかるべくして、与うれば恵を傷う。
├― 以て死すべく、以て死するなかるべくして、死すれば勇を傷う。
├25 逢蒙、師の羿(げい)を殺す
├― 逢蒙、射を羿(げい)に学び、羿の道を尽くして、思えらく、天下惟(ただ)羿のみ己に愈(まさ)れりとなすと、是に於て羿を殺す。
├― 孟子曰く、是れ羿も亦罪あり。
├26 美醜によらず
├― 西子(西施)も不潔を蒙(こうむ)らば、則ち人皆鼻を掩(おお)いて之を過ぎん。
├27 千年先の冬至を知る
├― 天の高き、星辰の遠き、苟も其の故を求めば、千歳の日至(冬至)も、坐(い)ながらにして致(し・知)るべきなり。
├28 礼の定めに従うのみ
├― 礼に、朝廷にては位を歴(へ)て相与(とも)に言(ものい)わず、階を踰(こ)えて相揖(ゆう)せず。
├29 終生の憂い
├― 君子の人に異なる所以は、其の心を存(かえり・省)みるを以てなり。 (中略)君子は終身の憂(うれえ)あるも、一朝の患(うれえ)なきなり。
├30 禹と后稷と顔回と →被髪纓冠
├― 禹・稷は平世に当りて、三たび其の門を過ぐれども入らず。孔子之を賢とせり。
├― 顔子は乱世に当りて、陋巷(ろうこう)に居り、一箪の食、一瓢の飮、人は其の憂に堪えざるも、顔子は其の楽しみを改めず。箪食瓢飲
├31 匡章は不幸者か
├― 世俗の所謂不孝なる者五つあり - 1.其の四支(てあし・四股)を惰(おこた)らせ、父母の養(やしない)を顧みざる
├― 2.博弈(ばくえき)して飲酒を好み、父母の養(やしない)を顧みざる
├― 3.貨財を好み、妻子にのみ私(わたくし)して、父母の養(やしない)を顧みざる
├― 4.耳目の欲を従(ほしいまま)にして、以て父母の戮(はずかしめ・辱)を為す
├― 5.勇を好みて闘很(あらそ)い、以て父母を危うくす
├32 曾子と子思
├― 曾子・子思道を同じくす。曾子は師なり、父兄なり。子思は臣なり、微(いや)し。曾子・子思地を易えば則ち皆然らん。
├33 堯・舜も常人と変わりなし
├― 儲子曰く、王、人をして夫子を瞯(うかが)わしむ。果して以て人に異なるあるか。
├― 孟子曰く、何を以て人に異ならんや、堯・舜も同じきのみ。
├34 見栄坊で恥知らずの男の話
├― 良人(おっと)出ずれば則ち必ず酒肉に饜(あ・飽)きて後に反(かえ)る。其の妻与(とも)に飲食する所の者を問えば、尽(ことどと)く富貴なり。
├― 墦間(はかば)の祭る者に之(ゆ)きて、其の余りを乞う。足らず、又顧(みまわ)して他に之く。此れ其の饜(飽)き足ることをなせる道なり。
└― 君子より之を觀(み)れば、則ち人の富貴利達を求むる所以の者、其の妻妾の羞(はじ)ず、相泣かざる者、幾(ほとん)ど希(まれ)なり。

09 万章上(ばんしょう・萬章) 第九 凡9章
├01 終生父母を慕う
├― 大孝は終身父母を慕う。五十にして慕う者は、予(われ)大舜に於て之を見るのみ。
├02 道を以てすればだまされる
├― 舜と象、子産 魚を池に畜う - 君子は欺(あざむ)くに其の方(みち・道)を以てすべきも、罔(し)うるに其の道に非ざるを以てし難し。
├03 象(しょう)を有痺(ゆうひ)に封ず
├― 仁人の弟に於けるや、怒を蔵(かく)さず、怨(うらみ)を宿(とど)めず、之を親愛するのみ。
├04 父も子としては扱えぬ
├― 盛徳の士(ひと)は、君も得て臣とせず、父も得て子とせず。
├― 舜 南面して立つや、堯 諸侯を帥(ひき)いて北面して之に朝し、瞽瞍(こそう・舜の父)も亦北面して之に朝せり。
├― 孔子曰わく、斯の時に於て、天下殆(あやう)いかな岌岌乎(きゅうきゅうこ)たりと、識らず、此の語誠に然るか。
├― 孟子曰く、否、此れ君子の言に非ず。斉東野人の語なり。 →斉東野人 →斉東野語
├― 普天(ふてん・溥天)の下、王土に非ざるは莫(な)く、率土(そつど)の浜(ひん)、王臣に非らざるは莫し。(『詩経』小雅・北山)
├― 詩を説く者は、文(もじ)を以て辞(ことば)を害(そこな)わず、辞を以て志を害わず、意を以て志を逆(むか・迎)うる。
├― 孝子の至(いたり)は、親を尊ぶより大なるはなし。親を尊ぶの至は、天下を以て養うより大なるはなし。
├05 民意のあるところに天意がある
├― 堯、天下を以て舜に与う - 天不言(ものい)わず、行(おこない)と事とを以て之を示すのみ。
├― 天の視るは我が民の視るに自(したが・従)い、天の聴くは我が民の聴くに自う。(『書経』大誓)
├06 世襲もまた天意
├― 為すなくして為せる者は、天なり。致すなくして至(いた)る者は、命なり。
├― 孔子曰く、唐・虞は禅(ゆず)り、夏后・殷・周は継ぐも、其の義は一なり。
├07 先覚者
├― 伊尹曰わく - 天の此の民を生ずるや、先知をして後知を覚(さと)しめ、先覚をして後覚を覚しむ。
├― 予(われ)は天民の先覚者なり、予将に斯の道を以て斯の民を覚さんとす。予之を覚すに非ざれば而(すなわ)ち誰ぞや。先覚者
├― 吾未だ己を枉(ま)げて人を正す者を聞かざるなり。況(いわん)や己を辱しめて以て天下を正す者をや。
├08 孔子の宿所
├― 孔子は進むにも礼を以てし、退くにも義を以てし、得ると得ざるとは命ありと曰(のたま)えり。
├09 賢者 百里奚(ひゃくり・けい)
└― 自ら〔その身を〕鬻(ひさぎ)て其の君を成さしむとは、郷党の自ら〔名を〕好む者も為さず、而るを賢者にして之を為すと謂わんや。

10 万章下(ばんしょう・萬章) 第十 凡9章
├01 集大成
├― 伯夷 - 目に悪色を視ず、耳に悪声を聞かず、其の君に非ざれば事えず、其の民に非ざれば使わず、治まれば則ち進み、乱るれば則ち退く。
├― 伯夷の風を聞く者は、頑夫(貪夫)も廉に、懦夫(だふ)も志を立つるあり。 →頑廉懦立
├― 伊尹 - 何(いず)れに事うるとしてか君に非ざらん、何れを使うとしてか民に非ざらん。治まるも亦進み、乱るるも亦進む。
├― 予(われ)は天民の先覚者なり、予将に斯の道を以て此の民を覚さんとす。先覚者
├― 柳下恵 - 汙君(おくん)を羞(は)じず、小官を辞せず、進んで賢を隠さず、必ず其の道を以てす。
├― 爾(なんじ)は爾たり、我は我たり。我が側に袒裼裸裎(はだぬ)くと雖も、爾焉(いずく)んぞ能く我を浼(けが・汚)さんや。
├― 柳下恵の風を聞く者は、鄙夫(ひふ)も寛に、薄夫(はくふ)も敦(あつ・厚)し。
├― 孔子 - 以て速かなるべくんば而ち速かにし、以て久しくすべくんば而ち久しゅうし、以て居るべくんば而ち居り、以て仕うべくんば而ち仕う。
├― 伯夷は聖の清なる者なり、伊尹は聖の任なる者なり、柳下恵は聖の和なる者なり、
├― 孔子は聖の時なる者なり、孔子は之を集めて大成せりと謂うべし。集大成
├― 集めて大成すとは、金声して玉振するなり。金声すとは条理を始むるなり、玉振すとは条理を終うるなり。金声玉振
├02 周の爵位俸禄の制度
├― 天子一位、公一位、候一位、伯一位、子男同一位、凡(すべ)て五等なり。
├― 君一位、卿一位、大夫一位、上士一位、中士一位、下士一位、凡て六等なり。
├― 天子の制は地、方千里、公候は皆方百里、伯は七十里、子男は五十里、凡て四等なり。五十里なること能わずして、天子に達せず。
├― 大国は地、方百里、君は卿の禄を十にし、卿の禄は大夫を四にし、大夫は上士に倍し、上士は中士に倍し、中士は下士に倍し、
├― 下士は庶人の官に在る者と禄を同じくす。禄は以て其の耕に代うるに足るなり。
├03 友と交わる道
├― 長を挾(たの・恃)まず、貴を挾まず、兄弟を挾まずして友とす。友とは其の徳を友とするなり、以て挾むことあるべからず。
├04 交際の心掛け
├― 其の交わるに道を以てし、其の接するに礼を以てせば、斯(すなわ)ち孔子も之を受けたり。
├― 孔子に見可行の仕(つかえ)あり、際可の仕あり、公養の仕あり。
├05 官職につく目的 →抱関撃柝
├― 仕(つこ)うるは貧の為にするに非ざるなり。而れども時有りてか貧の為にす。
├― 位卑しくして言高きは罪なり。人の本朝に立ちて道行なわれざるは恥なり。
├→ 其の位に在らざれば、其の政(まつりごと)を謀らず。(『論語』泰伯) →君子は思うこと其の位を出でず。(『論語』憲問)
├06 救済と恩恵
├― 常の職なくして上より賜わる者は、以て不恭と為すなり。 (中略)子思曰く、今にして後、君の犬馬をもて伋を畜(やしな)えるを知る。
├07 なぜ諸侯に会わないか
├― 国に在るを市井の臣と曰い、野に在るを草莽の臣と曰う。 庶人は質を傳(と・執)りて臣とならざれば、敢て諸侯に見(まみ)えざるは礼なり。
├― 志士は溝壑(こうがく)に在るを忘れず、勇士は其の元(こうべ・首)を喪(うしな)うを忘れず。
├― 夫れ義は路なり、礼は門なり。惟(ただ)君子のみ能く是の路に由(よ)り、是の門に出入すべし。
├08 尚友(しょうゆう)
├― 天下の善士を友とするを以て未だ足らずと為し、又 古の人を尚論す。
├― 其の詩を頌(誦)し、其の書を読むも、其の人を知らずして可ならんや。是の以(ゆえ)に其の世を論ず。是れ尚友なり。尚友読書尚友
├09 大臣の職責
├― 斉宣王、卿を問う
├― 貴戚の卿 - 君に大過あれば則ち諌め、之を反復して聴かざれば則ち位を易う。
└― 異姓の卿 - 君に過ちあれば則ち諌め、之を反復して聴かざれば則ち去る。

11 告子上(こくし) 第十一 凡20章
├01 本性は杞柳(かわやなぎ)のようなもの
├― 告子(告不害)曰く - 性は猶(なお)杞柳(こぶやなぎ)のごとく、義は猶 桮棬(まげもの)のごとし。
├― 人の性を以て仁義を為すは、猶 杞柳を以て桮棬を為(つく)るがごとし。
├― 孟子曰く - 如(も)し将に杞柳を戕賊(そこない)て以て桮棬と為すとせば、則ち亦 将に人を戕賊いて以て仁義を為さんとするか。
├02 本性は水のようなもの
├― 告子曰わく - 性は猶(なお)湍水のごとし。諸(これ)を東方に決(きりひら)けば則ち東に流れ、諸を西方に決けば則ち西に流る。
├― 人の性の善不善を分つことなきは、猶 水の東西を分つことなきがごとし。
├― 孟子曰わく - 水は信(まこと)に東西を分つことなきも、上下を分つことなからんや。人の性の善なるは、猶 水の下(ひく)きに就くがごとし。
├03 生きることが本性
├― 告子曰わく - 生これを性と謂う。
├― 孟子曰わく - 然らば、則ち犬の性を猶(なお)牛の性のごとく、牛の性は猶 人の性のごときか。
├04 仁内義外
├― 告子曰わく - 食と色とは性なり。仁は内なり、外に非ざるなり、義は外なり、内に非ざるなり。
├― 孟子曰わく - 秦人の炙(あぶりにく)を耆(たしな)むは、以て吾が炙を耆むに異なることなし。
├― 夫れ物も則ち亦 然(かくのごと)き者あるなり。然らば則ち炙を耆むも亦 外と有(な・為)すか。
├05 冬は湯を飲み夏は水を飲む
├― 公都子曰く、冬の日は則ち湯を飲み、夏の日は則ち水を飲む。然らば則ち飮食も亦 外に在るか。
├06 本性論と性善説
├― 其の情(せい・性)は、則ち以て善を為すべし。乃(是)れ所謂〔性〕善なり。夫(か)の不善を為すが若きは、才(性質)の罪に非ざるなり。
├― 人皆これ有り。惻隠の心は仁なり、羞悪の心は義なり、恭敬(辞譲)の心は礼なり、是非の心は智なり。四端 →公孫丑章句上
├― 仁義礼智は、我を鑠(かざ・飾)るに非ざるなり。我固(もと)より之を有するなり。〔自ら〕思わざるのみ。
├― 故に求むれば則ち之を得、舎(す)つれば則ち之を失うと曰えり。相倍蓰(ばいし)して算なき者あるは、其の才を尽くす能わざればなり。
├07 同類のものはみな似通う
├― 富歳には子弟頼(よきもの・善)多く、凶歳には子弟暴(あしきもの・悪)多し。
├― 凡(すべ)て類を同じくする者は、挙(みな)相い似たり。何ぞ独り人に至りて之を疑わん。聖人も我と類を同じくする者なり。
├― 理義の我が心を悦(よろこ)ばすは、猶(なお)芻拳(すうかん)の我が口を悦ばすがごときなり。
├08 牛山の木
├― 牛山の木、嘗(かつ)て美なりき。其の大国(斉)の郊たるを以て、斧斤(ふきん)之を伐(き)る。以て美と為すべけんや。
├― 豈(あに)仁義の心なからんや。其の良心を放つ所以の者も、亦 猶(なお)斧斤の木に於けるがごときなり。
├― 孔子曰く、操(と)れば則ち存し、舎(す)つれば則ち亡(うしな)う。出入時(とき)なく、其の郷(おるところ)を知る莫し。
├09 一日温めて十日冷やす
├― 天下生じ易き物ありと雖も、一日之を暴(あたた・温)めて、十日之を寒(ひや・冷)さば、未だ能く生ずる者あらざるなり。 →一暴十寒
├10 生命を捨てて義を守る
├― 生も亦 我が欲する所なり、義も亦 我が欲する所なり。二つの者兼むることを得べからざれば、生を舎てて義を取らん。
├11 なくした心を探し求めよ
├― 仁は人の心なり、義は人の路なり。其の路を舎(す)てて由(よ)らず、其の心を放ちて求むることを知らず。哀しいかな。
├― 学問の道は他なし、其の放心を求むるのみ。
├12 無名の指
├― 指の人に若(し)かざるは則ち之を悪(にく)むことを知るも、心の人に若かざるは則ち悪むことを知らず。
├13 一握りの桐梓(どうし)
├― 拱把(きょうは)の桐梓(とうし)は、人苟(いやしく)も之を生(長)ぜんと欲せば、皆之を養う所以の者を知る。
├― 身に至りては、之を養う所以の者を知らず。
├14 大を養うもの
├― 其の小を養う者は小人なり、其の大を養う者は大人なり。
├15 大体と小体
├― 此(みな・皆)天の我に与うる所の者なるも、先ず其の大なる者を立つれば、則ち其の小なる者奪う能わざるなり。此れを大人と為すのみ。
├16 天爵と人爵
├― 仁義忠信、善を楽しみて倦(う)まざるは、此れ天爵なり。公卿大夫、此れ人爵なり。
├17 真に貴いもの
├― 人人(ひとびと)己に貴き者(天爵)あり、思わざるのみ。〔他〕人の貴くする所の者(人爵)は良貴に非ざるなり。
├― 詩に、既に酔うに酒を以てし、既に飽くに徳を以てす(『詩経』大雅・既酔)と云えるは、仁義に飽くを言うなり。
├18 大いに不仁に与する者
├― 仁の不仁に勝つは、猶(なお)水の火に勝つがごとし。今の仁を為す者は、猶 一杯の水を以て、一車薪(しん)の火を救うがごとし。
├19 仁も成熟が大切
├― 五穀は種の美なる者なり。苟(いやしく)も熟せざらしめば、荑稗(ていはい)にも如かず。
├20 中心とするところ
├― 羿(げい)の人に射を教うるには、必ず彀(やごろ)に志す。学ぶ者も亦 必ず彀を志す。
└― 大匠の人に教うるには、必ず規矩(きく)を以てす、学ぶ者も亦 必ず規矩を以てす。

12 告子下(こくし) 第十二 凡16章
├01 礼に従うのと食べることと
├― 兄の臂(ひじ)を紾(ねじ)りて之(そ・其)の食を奪えば則ち食を得るも、紾らざれば則ち食を得ざらんときは、則ち将に之を紾らんか。
├02 ただ実行あるのみ
├― 堯・舜の道は、孝弟(孝悌)のみ
├03 親の過失
├― 親の過(あやまち)大にして怨みざるは、是れ愈(いよいよ)疏んずるなり。親の過小にして怨むは、是れ磯(いさ・諌)むべからずとするなり。
├― 愈疏んずるは不孝なり、磯むべからずとするも亦不孝なり。
├― 孔子曰く、舜は其れ至孝なり。五十にして慕う。
├04 仁義を中心に説得せよ
├― 宋牼と孟子 - 君臣・父子・兄弟、利を去り、仁義を懷(した)いて以て相接(まじ)わるなり。
├― 然(かくのごと)くにして王たらざる者は、未だ之れ有らざるなり。何ぞ必ずしも利を曰わん。
├05 季任(きじん)には会い、儲子(ちょし)には会わず
├― 書に曰く、享は儀〔礼〕を多(あつし)とす。儀、物に及ばざるを不享と曰う、惟(こ)れ志を享に役(もち・用)いざるなり。
├06 目指すところは一つの仁
├― 淳于髠と孟子 - 孔子は則ち微罪を以て行(さ)らんと欲す。苟(かりそめ)に去ることを為すを欲せざるなり。
├― 君子の為す所は、衆人固(もと)より識らざるなり。
├07 五人の覇者は三大王の罪人
├― 五霸は三王の罪人なり。今の諸侯は五霸の罪人なり。今の大夫は今の諸侯の罪人なり。
├→ 三王 - 夏禹王、殷湯王、周文王・武王
├→ 五覇 - 斉桓公 晋文公 宋襄公 秦穆公 楚荘王(他説では斉桓・晋文以外の三人に呉王闔閭、越王勾践などを挙げる場合もあり)
├→ 趙氏曰く、五霸は、斉桓・晋文・秦穆・宋襄・楚荘なり。三王は、夏の禹・商の湯・周の文・武なり。(趙岐注)
├08 たとい勝つとも不可
├― 民を教えずして之を用うるは。之を民にを殃(わざわい)すと謂う。民を殃する者は、堯舜の世に容れられず。
├― 君子の君に事(つこ)うるや、務めて其の君を引(みちび・導)きて以て道に当(かな・適)い仁に志さしむるのみ。
├09 桀を助け、桀のために富を増す
├― 君、道に郷(む)かわず、仁に志さざるに、之を富まさんことを求むるは、是れ桀を富ましむるなり。
├10 二十分の一税
├― 白圭と孟子 - 今や中国に居り、人倫を去り、君子なくんば、如之何(いかん)ぞ其れ可ならんや。
├11 隣国に水を落とす
├― 白圭と孟子 - 禹は四海を以て壑(たに)とせるも、今吾子は鄰国を以て壑となす。
├12 誠実
├― 君子の亮(かか・諒)わらざるは、〔一を〕執ることを悪(にく)めばなり。
├13 善いことの好きな者
├― 魯、楽正子をして政(正卿)たらしめんと欲す - 孟子曰く、吾之を聞きて喜びて寐(いね)られず。
├― 善を好めば天下に優(あまり・余裕)あり。而るを況(いわん)や魯国をや。
├14 三つの去就
├― 之を迎うるに敬を致して以て礼あり。言えば将に其の言を行わんとすれば、則ち之に就く。
├― 礼貌(うやまうこと)未だ衰えざるも、言行われざれば、則ち之を去る。
├15 天の試練
├― 天の将に大任を是の人に降さんとするや、必ず先ず其の心志を苦しめ、其の筋骨を労せしめ、其の体膚(たいふ)を〔窮〕餓せしめ、
├― 其の身行を空乏せしめ、其の為さんとする所を拂乱せしむ。心を動かし性を忍ばせ、其の能くせざる所を曾益(増益)せしむる所以なり。
├― (中略)人、恒(つね)に過ちて然る後に能く改め、心に困(くる)しみ、慮(おもんぱかり)に衡(み・横)ちて、然る後に作(おこ)り、
├― 色に徵(あらわ)れ、声に発して、然る後に喩(さと)る。
├― 入りては則ち法家・拂士(ひつし・輔弼の士)なく、出でては則ち敵国外患なき者は、国恒(つね)に亡ぶ。
├16 教えないのもまた教育
└― 教(おしえ)も亦術多し。予(われ)之を教誨するを屑(いさぎよ・潔)しとせざることも、是れ亦之を教誨するのみ。

13 尽心上(じんしん・盡心) 第十三 凡46章
├01 天に仕える道
├― 其の心を尽くす者は、其の性を知るべし。其の性を知らば、則ち天を知らん。
├― 其の心を存し、其の性を養うは、天に事(つこ)うる所以なり。
├― 殀寿(ようじゅ)貮(たが)わず、身を脩めて以て之を俟(ま)つは、命を立つる所以なり。 →立命
├02 命(めい)の本すじ
├― 命に非ざることなきも、其の正〔命〕を順受すべし。是の故に〔天〕命を知る者は、巖牆(がんしょう)の下(もと)に立たず。 →巌牆之下
├03 手にはいるもの、はいらないもの
├― 求むれば則ち之を得、舍(す)つれば則ち之を失うは、是れ求むること得るに益あるなり。我に在る者を求むればなり。
├04 万物はみな自分に備わる
├― 万物皆我に備わる。身に反りみて誠あらば、楽しみ焉(これ)より大いなるは莫し。恕を強(つと)めて行なう、仁を求むること焉より近きは莫し。
├05 その道理を知らぬ者多し
├― 行ないて著(あき・明)らかならず、習いて察(つまび)らかならず、終身之に由るも其の道を知らざる者衆(おお・多)し。
├06 無恥を恥じる
├― 人以て恥ずることなかるべからず。恥ずることなきをこれ恥ずれば、恥なし。
├07 他人に及ばぬことを恥じる
├― 恥の人に於るや大なり。機変の巧を為す者は、用(もっ)て恥ずる所なし。人に若(し)かざるを恥じざれば、何の人に若くことかあらん。
├08 善を好み権勢を忘る
├― 古の賢王は、善を好みて勢いを忘る。古の賢士、何ぞ独り然らざらん。其の道を楽しみて人の勢いを忘る。
├09 困窮しても義を失わず、出世しても道を離れず
├― 士は窮しても義を失わず、達しても道を離れず、窮しても義を失わざるが故に士 己を得、達しても道を離れざるが故に民 望みを失わず。
├10 豪傑の士
├― 文王を待ちて而る後に興る者は、凡民なり。夫(か)の豪傑の士の若(ごと)きは、文王なしと雖も猶興る。
├11 韓・魏の富も喜ばず
├― 之に附(ま・益)すに韓・魏の家を以てするも、如し其の自ら視ること欿然(かんぜん)たらば、則ち人に過ぐること遠し。
├12 人民の怨まぬ場合
├― 佚道(いつどう)を以て民を使えば、労すと雖も怨みず。生道を以て民を殺せば、死すと雖も殺す者を怨みず。
├13 覇者の民と王者の民と
├― 霸者の民は驩虞如(かんぐじょ)たり。王者の民は皞皞如(こうこうじょ)たり。
├14 善政と善教
├― 善政は民の財を得、善教は民の心を得。
├15 良能良知
├― 人の学ばずして能くする所の者は、其の良能なり。慮(おもんぱか)らずして知る所の者は、其の良知なり。 →良知良能
├― 親を親しむは仁なり。長を敬するは義なり。他なし、之を天下に達(おしおよ)ぼすのみ。
├16 深山の舜
├― 其の一善言を聞き、一善行を見るに及びては、江河を決(きりひら)きて沛然たるが若(ごと)く、之を能く禦(とど・止)むることなし。
├17 しないこと、ほしがらないもの
├― 其の為さざる所を為すことなく、其の欲せざる所を欲することなかれ。〔君子の道は〕此(かく)の如きのみ。
├18 すぐれた人物は苦しみの中よりあらわれる
├― 人の徳慧術知ある者は、恒(つね)に疢疾(ちんしつ)に存す。
├19 四種の人物
├― 1.君に事(つこ)うる人 - 是の君に事えて、則ち容悦(よろこばるること)を為す者なり。
├― 2.社稷を安んずる臣 - 社稷を安んずるを以て悦(よろこび)と為す者なり。
├― 3.天民 - 達(道)天下に行なわるべくして、而る後に之を行なう者なり。
├― 4.大人 - 己を正しくして物正しき者なり。
├20 君子に三楽あり
├― 君子に三つの楽(たのしみ)あり。而して天下に王たるは与(あずか)り存せず。
├― 1.父母倶(とも)に存し、兄弟故(こと)なきは、一の楽なり。
├― 2.仰いで天に愧(は)じず、俯して人に怍(は)じざるは、二の楽なり。
├― 3.天下の英才を得て之を教育するは、三の楽なり。
├21 君子が本性と考えること
├― 君子の性とする所は、大いに行なわると雖も加わらず、窮居すと雖も損ぜず、分定まるが故なり。
├― 君子の性とする所は、仁義礼智心に根ざす。其の色(かおいろ)に生ずるや、睟然(すいぜん)として面に見(あら)われ、
├― 背に盎(あら)われ、四体に施(なが)れ、言(ものい)わざるも喩(さと)る。
├22 よく老人を養う
├― 文王の民、凍餒(とうたい)の老(としより)なし。
├23 火水のようにあり余らせる
├― 聖人の天下を治むるや、菽粟(しゅくぞく)あること水火の如くならしむ。菽粟水火の如くにして、民焉(いずく)んぞ不仁なる者あらんや。
├24 太山に登って天下を小とす
├― 孔子、東山に登りて魯を小とし、太山(泰山)に登りて天下を小とせり。
├― 流水の物たるや、科(あな・窪)に盈(み)たざれば行かず。君子の道に於けるや、章(くぎり)を成さざれば達せず。
├25 舜と盗人
├― 舜と蹠(せき・盗跖)との分を知らんと欲せば、他なし、利と善との間なり。
├26 一つにこり固まるのをにくむ
├― 楊子(楊朱) - 楊子は我が為にす。一毛を抜きて天下を利するも、為さざるなり。 →一毛不抜
├― 墨子(墨翟) - 墨子は兼ね愛す。頂(あたま)を摩(すりへら)して踵(くびす)にまで放(至)るまで天下を利することは之を為す。→摩頂放踵
├― 子莫 - 子莫は中を執る。中を執るは之に近しとなすも、中を執りて権(はか)ることなければ、猶一を執るがごとし。
├27 飢えやかわきの害
├― 人能く飢渴の害を以て心の害となすなくんば、則ち人に及ばざるを憂(うれえ)と為さず。
├28 柳下恵
├― 柳下恵(展禽)は、三公を以てするも其の介(みさお・操)を易えず。
├29 最後までやりぬく
├― 為すことある者は辟(たと・譬)えば井(いど)を掘るが若し。井を掘ること九軔(じん)なるも泉に及ばざれば、猶井を棄つとなすなり。
├30 堯・舜の仁義、湯・武の仁義、覇者の仁義
├― 堯・舜は之を性のままにし、湯・武は之を身につけ、五霸は之を仮(借)る。久しく仮りて帰(還)さずんば、悪んぞ其の有に非ざるを知らんや。
├31 伊尹(いいん)ほどの志なら可
├― 伊尹の志あらば則ち可なり、伊尹の志なくんば則ち簒(うば)えるなり。
├32 働かずして食らうまじ
├― 君子の是の国に居るや、其の君之を用うれば則ち安富尊栄し、其の子弟之に従えば則ち孝弟忠信なり。
├33 志を高尚にする
├― 仁に居り、義に由れば、大人の事備わる。
├34 陳仲子の潔癖
├― 人は親戚・君臣・上下を亡(なみ・無)するより大いなる〔不義〕は莫し。
├35 瞽瞍(こそう)が人を殺したら
├― 舜は天下を棄つるを視ること、猶 敝蹝(へいし・草履)を棄つるがごとし。
├36 環境が人を変える
├― 居は気を移し、養は体を移す。大なるかな居や。夫れ尽(ことごと)く人の子に非ず。
├37 豚として接し、獣として飼う
├― 食(やしな)いて愛せざるは、之を豕(豚)として交わるなり。愛して敬せざるは、之を獣として畜(やしな)うなり。
├― 恭敬にして実なくば、君子は虛しく拘(とど・留)むべからず。
├38 肉体と色欲は本性
├― 形(からだつき)と色(かおつき)は、天性なり。惟(ただ)聖人にして然る後に以て形(からだのはたらき)を践(ふ)むべし。
├39 服喪の期間は縮めてよいか
├― 是れ猶其の兄の臂(ひじ)を紾(ねじ)るものあらんに、子 之に姑(しばら)く徐徐にせよと謂うがごときなり。
├40 五つの教育法
├― 1.時雨の之を化すが如き者
├― 2.徳を成す者
├― 3.財を達する者
├― 4.問に答うる者
├― 5.私(ひそ)かに淑艾(しゅくかい)せしむる者
├41 努力にたえる者がつき従う
├― 君子は引きて発(はな)たず、躍如たり。中道にして立つ。能者のみ之に従う。
├42 道とわが身と人欲と
├― 天下道あれば道を以て身に殉(したが・従)わしめ、天下道なければ身を以て道に殉う。
├43 問いに答えぬ場合
├― 貴を挾(たの)みて問い、賢を挾みて問い、長を挾みて問い、勲労あるを挾みて問い、故あるを挾みて問うは、皆答えざる所なり。
├44 進み方の鋭いものは退(ひ)き方も速い
├― 已(や)むべからざるに於て已むる者は、已めざる所なし。
├― 厚くす所(べき)者に於て薄くするは、薄くせざる所なし。
├― 其の進むこと鋭(はや・疾)き者は、其の退くことも速かなり。
├45 親には親しみ、人民には仁、物には愛情
├― 親を親しみて民を仁し、民を仁して物を愛す。
├46 まずなすべき務め
└― 知者は知らざることなきも、当(まさ)に務むべきをこれ急となす。仁者は愛せざることなきも、賢を親しむをこれ急となす。

14 尽心下(じんしん・盡心) 第十四 凡38章
├01 不仁なる梁の恵王
├― 仁者は其の愛する所を以て其の愛せざる所に及ぼし、不仁者は其の愛せざる所を以て其の愛する所に及ぼす。
├02 義にかなった戦いはない
├― 春秋に義戦なし。彼、此より善きは則ち之れあり。征とは上、下を伐つなり。敵国は相征せざるなり。
├03 書なきにしかず
├― 尽(ことごと)く書(書経)を信ずれば、則ち書なきに如かず。
├― 吾武・成に於て二三策を取るのみ。仁人は天下に敵なし。至仁を以て至不仁を伐つ、而何(いかん)ぞ其れ血杵(たて)を流さんや。
├04 いくさの巧者は罪人である
├― 人あり、我善く陳(じんだて)を為し、我善く戦を為すと曰うは、大罪なり。
├― 国君、仁を好めば、天下に敵なし。
├― 南面して征すれば北夷(北狄)怨み、東面して征すれば西夷怨みて、奚為(なんす)れぞ我を後にすると曰わん。
├― 武王、畏るること無かれ、爾を寧んずるなり、百姓を敵とするに非ずと曰えば、崩るるが若く厥角稽首せり。 →厥角稽首
├― 征の言たる、正なり。各(おのおの)己を正さんことを欲せば、焉(いずく)んぞ戦を用いん。
├05 技の巧者にすることはできぬ
├― 梓・匠・輪・輿は、能く人に規矩を与うるも、人をして巧(たくみ)ならしむること能わず。
├06 生涯かわらぬ舜の無欲
├― 舜の糗(ほしいい)を飯い草(な)を茹(くら・食)うや、将に身を終えんとするが若(ごと)し。
├― 其の天子となるに及びては、袗衣(しんい)を被(き)、琴を鼓(ひ)き、二女果(はべ・侍)る。固より之れあるが若し。
├07 殺しあいの恐ろしさ
├― 人の父を殺せば人も亦其の父を殺し、人の兄を殺せば人も亦其の兄を殺す。然らば則ち自ら之を殺すに非ざるも、一間のみ。
├08 なんのための関所か
├― 古の関(関所)を為(つく)りしは、将に以て暴を禦(ふせ)がんとせるも、今の関を為るは、将に以て暴を為さんとするなり。
├09 妻子にさえ行われぬ
├― 身、道を行わざれば、妻子にも行なわれず。人を使うに道を以てせざれば、妻子をも行於(つか)うこと能わず。
├10 よこしまな世も心を乱すことはできぬ
├― 利に周(あまね)き者は、凶年も殺すこと能わず。徳に周き者は、邪世も乱すこと能わず。
├11 本心が顔を出す
├― 名を好む人は能く千乗の国を讓る。苟(いやしく)も其の人に非ざれば、箪食豆羹(たんしとうこう)も色(かおいろ)に見(あらわ)る。
├12 仁者・賢人、礼儀、正しい政治
├― 仁賢を信ぜざれば則ち国空虛なり。礼義なければ則ち上下乱る。政事なければ則ち財用足らず。
├13 無慈悲な人は天下を治めえない
├― 不仁にして国を得る者は之れ有らんも、不仁にして天下を得る〔者〕は未だ之れ有らざるなり。
├14 民を尊しとなす
├― 民を貴しと為し、社稷之に次ぎ、君を軽しと為す。
├― 是の故に丘民(衆民)に得られて天子と為り、天子に得られて諸侯と為り、諸侯に得られて大夫と為る。
├― 諸侯社稷を危くすれば、則ち変(あらた)めて置(た・立)つ。
├15 聖人は百世の師
├― 聖人は百世の師なり。伯夷・柳下恵是れなり。
├― 伯夷の風を聞く者は、頑夫も廉に、懦夫(だふ)も志を立つる有り。
├― 柳下恵の風を聞く者は、薄夫も敦(あつ)く、鄙夫(ひふ)も寬なり。
├― 百世の上に奮(ふる)いて、百世の下、聞く者興起せざるはなきなり。聖人に非ずして能く是(かく)の若くならんや。
├16 仁と道
├― 仁とは人なり。〔義とは宜なり。〕合わせて之を言えば道なり。
├17 父母の国を去るとき
├― 孔子の魯を去るや、遅遅として吾行(さ・去)ると曰えり。父母の国を去るの道なり。
├― 斉を去るや、淅(かしごめ)を接(すく)いて行る。他国を去るの道なり。
├18 陳・蔡の厄(やく)
├― 君子(孔子)の陳・蔡の間に戹(やく・厄)せるは、上下〔君臣と〕の交なければなり。
├19 士は人に悪(にく)まれる
├― 傷(いた)むことなかれ。士は茲(こ)の多口に憎まる。
├20 盲(めくら)が導く
├― 賢者は其の昭昭たるを以て、人をして昭昭ならしむ。今は其の昏昏を以て、人をして昭昭ならしめんとす。
├21 通らぬ道は消える
├― 山径(やまのうえ)の蹊(こみち)も介然として之を用(ゆ・行)けば路を成す。為間(しばら)く用かざれば則ち茅(ちがや)之を塞ぐ。
├22 くちかけた鐘の把手(とって)
├― 高子曰く、禹の声(楽)は、文王の声に尚(まさ)れり。
├― 是れ奚(なん)ぞ〔以て之を知るに〕足らんや。城門の軌(わだち)は、両馬(一車)の力ならんや。
├23 馮婦(ひょうふ)の冒険をまねるな
├― 晋人に馮婦という者あり。善く虎を搏(てうち)にせり。 (中略)衆皆之を悦びしも、其の士たる者は之を笑えり。
├24 性と命と
├― 口の〔美〕味に於る、目の〔美〕色に於る、耳の〔美〕声に於る、鼻の臭(芳香)に於る、四肢の安佚に於るは、性なり。
├― 仁の父子に於る、義の君臣に於る、礼の賓主に於る、智の賢者に於る、聖の天道に於るは、命なり。
├25 善と信と
├― 楽正子は善人なり、信人なり。
├― 欲すべき之を善と謂う。己に有る之を信と謂う。充実せる之を美と謂う。
├― 充実して光輝ある之を大と謂う。大にして之を化せる之を聖と謂う。聖にして知るべからざる之を神と謂う。
├26 来る者は受け入れよう
├― 墨を逃(さ・去)れば必ず楊に帰し、楊を逃れば必ず儒に帰す。帰すれば斯(すなわ)ち之を受けんのみ。
├― 今の楊・墨と弁ずる者は、放てる豚を追うが如し。既に其の苙(おり)に入れば、又従いて之を招(つな)ぐ。
├27 三つの税
├― 布縷(ふる)の征と粟米の征と力役の征とあり。君子は其の一つを用いて其の二つを緩くす。
├― 其の二つを用いて民殍(ひょう・飢死)あり、其の三つを用いて父子離る。
├28 三つの宝
├― 諸侯の宝は三つ、土地・人民・政事なり。珠玉を宝とする者は、殃(わざわい)必ず身に及ぶ。
├29 殺される条件
├― 盆成括、斉に仕う - 其の人となり小しく才ありて未だ君子の大道を聞かず。則ち以て其の軀(み)を殺すに足るのみ。
├30 来たる者は拒まず
├― 夫子の科を設くるや、往(さ・去)る者は追わず、来る者は距(こば・拒)まず。苟(いやしく)も是の心を以て至らば斯(すなわ)ち之を受くるのみ。
├31 こそ泥の類(たぐい)
├― 人皆忍びざる所あり、之を其の忍ぶ所に達(おしおよ)ぼせば、仁なり。人皆為さざる所あり、之を其の為す所に達ぼせば、義なり。
├― 士、未だ以て言うべからずして言うは、是れ言うを以て銛(と・取)るなり。
├― 以て言うべくして言わざるは、是れ言わざるを以て銛るなり。是れ皆穿踰(せんゆ)の類なり。
├32 自分に重く他人に軽く
├― 言(ことば)近くして指(むね・旨)遠き者は、善言なり。守り約(簡)にして施し博き者は、善道なり。
├― 君子の言や、不下帯(むねのうち)に道存す。君子の守は、其の身を脩むるのみにして天下平かなり。
├― 人は其の田を舍(す)てて人の田を芸(くさぎ)り、人に求むる所の者重くして、自ら任ずる所以の者軽きを病(うりょ・患)うべし。
├33 行いて命(めい)をまつ
├― 動容周旋、礼に中(あた)る者は、盛徳の至なり。
├― 君子は法〔度〕を行ないて以て〔天〕命を俟(ま・待)つのみ。
├34 権勢をばかにせよ
├― 大人に説くには、則ち之を藐(かろん・軽)ぜよ、其の巍巍然たるを視ること勿(なか)れ。
├35 寡欲と多欲
├― 心を養うは、欲を寡(すく)なくするより善きはなし。
├36 焼肉のあえ物と黒ナツメ
├― 曾皙(そうせき)羊棗(ようそう)を嗜む。而して〔父の皙の歿後〕曾子羊棗を食らうに忍びず。
├― 膾炙は同じく〔好む〕所なり。羊棗は〔曾皙〕独り〔好む〕所なり。
├― 名を諱(い)みて姓を諱まざるは、姓は同じゅうする所なるも、名は独りする所なればなり。
├37 似て非なる者を悪(にく)む
├― 孔子曰く - 我が門を過ぎて我が室(いえ)に入らざるも、我憾(うら)みざる者は其れ惟(ただ)郷原か。郷原は徳の賊なり。
├― 孟子曰く - 斯の世に生まれては斯の世を為さんのみ。善(よみ)せらるれば斯(すなわ)ち可なり。閹然として世に媚ぶる者は、是れ郷原なり。
├― 君子は経(つねのみち)に反るのみ。経 正(おさ・治)まれば則ち庶民興る。庶民興れば斯(すなわ)ち邪慝なし。
├38 わたしは何をなすべきか
├― 堯・舜より湯に至るまで、五百有余歳。禹・皐陶の若(ごと)きは則ち見て之を知り、湯の若きは則ち聞いて之を知る。
├― 湯より文王に至るまで、五百有余歳。伊尹・萊朱の若きは則ち見て之を知り、文王の若きは則ち聞いて之を知る。
├― 文王より孔子に至るまで、五百有余歳。太公望・散宜生の若きは則ち見て之を知り、孔子の若きは則ち聞いて之を知る。
├― 孔子より而来(このかた)、今に至るまで百有余歳。聖人の世を去ること此(かく)の若く其れ未だ遠からず。
└― 聖人の居(魯・曲阜)に近きこと此の若く其れ甚だし。然而(かくのごとく)にして有ることなくんば、則ち亦有ることなからん。


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■孟子(もうし) 14巻7篇
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01 梁恵王(りょうけいおう)上 第一
02 梁恵王(りょうけいおう)下 第二
03 公孫丑(こうそんちゅう)上 第三
04 公孫丑(こうそんちゅう)下 第四
05 滕文公(とうぶんこう)上 第五
06 滕文公(とうぶんこう)下 第六
07 離婁(りろう)上 第七
08 離婁(りろう)下 第八
09 万章(ばんしょう・萬章)上 第九
10 万章(ばんしょう・萬章)下 第十
11 告子(こくし)上 第十一
12 告子(こくし)下 第十二
13 尽心(じんしん・盡心)上 第十三
14 尽心(じんしん・盡心)下 第十四

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 ■参考書籍
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  孟子曰く「古人の糟粕? 私なら古人の著書を読み尚友とするけどねw」
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 『孟子(上・下)』 孟軻/小林勝人/岩波文庫 …> [関連書籍] 
 戦国時代の中国、百家争鳴の世に現われて、孔子の教えを軸にしつつ、独自の思想を展開した
 孟軻の言行録である。彼は、人が天から与えられた本性は善であるという信念に立って、
 この天から万人に等しく与えられた本性を、全面的に開花させるための実践倫理を示した。
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 『論語』 孔丘弟子/金谷治/岩波文庫 …> [関連書籍] 
 古代中国の大古典「四書」のひとつで、孔子とその弟子たちの言行を集録したもの。
 人間として守るべきまた行うべき、しごく当り前のことが簡潔な言葉で記されている。
 長年にわたって親しまれてきた岩波文庫版『論語』がさらに読みやすくなった改訂新版。
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 『論語』 孔丘(門弟)/加地伸行/講談社学術文庫 …> [関連書籍] 
 孔子とその門人の言行録から成る『論語』は私たちの生き方の原点を見つめた思索の宝庫であり、
 人間性を磨く叡智が凝縮した永遠の古典である。読めば読むほど胸に深く沁み込む簡潔な言葉の数々。
 儒教学の第一人者の意欲的で懇切丁寧な注釈と、今にも語り出すかのような臨場感ある現代語訳。
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 『大学・中庸』 金谷治/岩波文庫 …> [関連書籍] 
 天下国家の政治もその根本は一身の修養にあることを説く『大学』。人間の本性とは何かを論じ、
 「誠」の哲学を説く『中庸』。朱子によって『論語』『孟子』とともに四書の一つとされた儒教の経典。
 本書では、朱子以前の古い読み方を探求して、両書の本来の意味を明らかにすることを主眼とした。
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 『荀子(上下)』 荀況/金谷治/岩波文庫 …> [関連書籍] 
 勧学篇に始まり堯問篇に終る荀子の全思想の記録。彼は性悪説を主張し、その説くところによれば、
 人間は放任すれば乱れるからその悪である性を矯正し、世の混乱を防ぐために伝統的な教え、
 即ち「礼」を学ぶことが必要であるという。 広く一般に理解できるよう読み下しと口語訳とを収録。
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 『墨子』 墨翟/浅野裕一/講談社学術文庫 …> [関連書籍] 
 春秋時代末期に墨子が創始し、戦国末まで儒家と思想家を二分する巨大勢力を誇った墨家の学団。
 自己と他者を等しく愛せと説く「兼愛」や、侵略戦争を否定する「非攻」の思想を唱え独自の武装集団も
 保有したが、秦漢帝国成立期の激動の中で突如、その姿を消す。 墨家の思想の全容と消長の軌跡。
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 『諸子百家』 浅野裕一/講談社学術文庫 …> [関連書籍]
 春秋戦国を縦横無尽に駆け抜けた才智と戦略、自らの理想を実現すべく諸国を巡った諸子百家。
 快楽至上主義の楊朱と兼愛の戦士・墨子の思想がなぜ天下を二分するほど支持されたのか。
 新出土資料で判明した老子、孫子、孔子などの実像や、鄒衍・公孫龍らの思想も興味深く説く。
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 『史記(1)~(8)』 司馬遷/小竹文夫・小竹武夫/ちくま学芸文庫 …> [関連書籍] 
 西漢の司馬遷が著した中国最初の正史『史記』は、古代中国の社会と人間を生きいきと描きだし、
 日本でも広く親しまれてきた。 歴代帝王の系譜である「本紀」、諸侯の興亡を伝える「世家」、
 そして乱世を駆け抜けた人間を描く「列伝」。 本書は古と今をつなぐ、全人類共通の財産といえる。
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 『中国古典名言事典』 諸橋轍次/講談社学術文庫 …> [関連書籍]
 厖大な中国の古典のなかから4,800余を精選、簡潔にして分かりやすい解説を付した名言名句集。
 どの章句にも古典の英知・達人の知恵・人間のドラマが宿っており、人生の指針にみちている。
 激動の時代を生きる現代人が座右に置いて、あらゆる機会に再読・三読すべき画期的な辞典である。
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